OUR STORY

2021.05.31

米国での15年のキャリアを経て東京へ 日本企業のために戦う国際争訟ロイヤー

海外ドラマ「SUITS」の出演者のようにスマートな佇まいのクリストファー・スチュードベーカー弁護士

「クライアントを第一に」というご自身のスタンスは、流暢な日本語で適切な言葉を選びながら行う説明や、質問に対して丁寧に耳を傾ける姿勢からも伝わってきます。

トムソン・ロイターの証券訴訟分野における「New York Super Lawyer」に選ばれるなど、米国で多数の実績を残したスチュードベーカー弁護士ですが、なぜ日本に拠点を移し、東京国際法律事務所(以下、TKI)への参画を決意したのでしょうか。

弁護士として日本と米国の架け橋になりたかった

まずは弁護士を目指した理由を教えていただけますか。

法曹を意識し始めたのはワシントンDCでリーダーシップ育成プログラムに参加した高校生の頃です。当時は、日米間の貿易摩擦がまだ話題に上がるような時期で、母親が日本人であった私にとってこの問題は大変興味深いものでした。そこから、米国の政治や国際関係、日本の経済成長と政治に興味を持ち始め、ワシントンDCの大学で国際関係学を専攻するに至りました。弁護士として米国通商代表部(USTR)で働くなかで日米間のビジネス関連の問題を解決するような仕事に憧れをもったことを覚えています。

アメリカでも日本でも一貫してクロスボーダー案件を取り扱い、日米の企業をサポートする仕事ができていることは幸運なことだと思っています。

米国でキャリアを積まれ、輝かしい実績も残されています。なぜ日本へ移住しTKIへ参画しようと思われたのでしょうか。

2019年の夏に、TKIと共に日系企業が関与する米国での仲裁を代理したことがきっかけです。当時の私は弁護士としてニューヨークで15年以上の経験を積み、日本で新たな挑戦ができないか考え始めていたところでした。一方でTKIは、紛争・国際仲裁のプラクティスを大きくしようとしている最中。私たちにとって絶妙なタイミングだったのです。

代表の森弁護士、山田弁護士を通してTKIについて知るにつれ、TKIがほかの日本の法律事務所と一線を画していることに気づきました。

まず、既存の国内ビジネスを維持しつつも、明確に日本企業の海外進出をサポートする姿勢を打ち出している点です。代表や私のようなクロスボーダー案件専門の弁護士を集め、新規弁護士登録者を集める司法試験受験者向けのメッセージでもそのような強い意志を持つ人材を求めるスタイルはTKIの大きな特色であると思いました。
(Our Story:東京国際法律事務所のMISSION・VALUESに共感した3人が語る 弁護士1年目のリアル

また、所内の組織文化を意識的にフラットにしている点にも大きな魅力を感じました。役職、年齢、経験、性別の垣根を越えて誰もが忌憚なく意見を交わすことができる環境づくりは、最終的にビジネスを効率的に進めるうえで非常に重要なことです。

TKIのビジョンと組織文化が参画を決めた大きなポイントです。

クライアントのニーズに耳を傾け、最善の形で解決を目指す

スチュードベーカー弁護士のこれまでの経験が今後どのように日本企業に役立つとお考えですか。


アメリカの弁護士は、発注を受けた仕事をこなすだけではなく、クライアント側が認識できていない問題やリスクを指摘し、企業のビジネスに最適な解決策をセットで提案します。これは英語で「Issue Spotting」と表現され、米国のロースクールでは繰り返し訓練するスキルです。

積極的に企業のリスクを低減させ、さらに解決策を提案する、このようなサービスの経験を持っていることが自分の強みであり日本企業の皆様のお役に立てると確信しています。

例えば、ビジネス間での紛争の多くは未然に防ぐことができるものです。契約条件が複雑なあまり、曖昧な点や矛盾点を見過ごし、最終的に訴訟に発展してしまうケースがあります。初期の契約交渉の過程で弁護士が適切に対応していれば防ぐことができたかもしれません。

また、多くの日本企業は、各国の汚職防止法や独占禁止法違反の深刻な問題に直面してきました。事前に適切な内部統制や法令遵守方針を策定しなかったことが原因です。諸外国の法令対策不足から、数億円の訴訟費用、規制当局への罰金、集団訴訟の和解金、社会的名誉の棄損等を被ってきた日本企業の例は、数え切れないほど多くあります。

日本企業がこのような状況に陥らないためにも、私の強みである訴訟関連の経験を契約交渉の段階から活かし、紛争リスクを少しでも減らす一助となりたいと思っています。

クライアント・ファーストで仕事を進められているのですね。

短期的な利益より、クライアントとの長期に渡る信頼関係のほうがずっと重要であることは言うまでもありません。

長期的な関係を築くために、クライアントのニーズに耳を傾けることを私は最も大切にしています。

私たち弁護士は、解決策を得るための法的助言を求められる一方で、ニーズを正しく理解しなければ、適切な法的アドバイスを提供できません。

個人間の関係でも、相手から悩みを打ち明けられた場合は、いきなり解決策を提示するのではなく、まずは話を聞き、何に悩んでいるのか理解するところからはじめると思います。それは、会社の場合も同じです。まずは悩みを吐き出してもらい、クライアントの本当のニーズを引き出し、安心・信頼してもらうことが大切だと思っています。

クライアントとのコミュニケーションで心がけていることはありますか。

私は、これまで成功報酬での紛争案件を多く手掛けてきました。そのため、案件を扱う際は、クライアントにとっていちばん近道となる方法を考えたいという意識が強く、常に合理性を図りながら業務に取り組んでいます。その上で、クライアントと常に進捗を共有し、プロジェクトに必要以上の弁護士やパラリーガルをアサインしないよう心がけています。

また、紛争は時にビジネスに深刻な混乱を招きます。敵対的な訴訟や仲裁がクライアントにとって最善の解決に繋がらないようなケースでは、クライアントを有利な交渉へと導き、問題を友好的に解決することが私の役割であると考えています。

組織内の多様性を高め、ワンストップで
どんな問題でも解決できる事務所に

最後に、スチュードベーカー弁護士の今後のビジョンを伺えますか。




TKIは無限の可能性を秘めた事務所です。

伝統にとらわれず、事務所の仲間たち、クライアントと共に、日本社会に貢献できる、柔軟で理想的な事務所を築き上げていきたいと考えています。

例えば、性別、国籍、性的指向等のダイバーシティの推進は、私たちの取り組みの1つです。多様な価値観や考え方を組織として持っていると、そこで行われる議論はより深いものになり、Issue Spottingの質も向上します。そして、事務所としての経験値や専門性をさらに多様化させることで、TKIに相談すればワンストップでどんな問題でも解決できる、と思ってもらえるような事務所にしていきたいと考えています。

また、次世代の弁護士やオピニオンリーダーの指導・育成にも取り組んでいきます。10年後には50~100人規模の外資系法律事務所と肩を並べるような事務所になるよう、私を含めたメンバー全員が一丸となってクライアントを支援していける環境をつくっていきたいですね。

(文:周藤 瞳美、取材・編集:周藤 瞳美・松本慎一郎、写真:弘田 充)