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本ニュースレターでは、国際仲裁における仲裁機関の選択の視点を、古くから比較的多くの企業に 国際仲裁における仲裁機関の選択のポイント 1._伝統のICCと新興のSIAC ICC(International Chamber of Commerce/国際商業会議所)は、1923年に仲裁裁判所が設立された歴史と定評のある仲裁機関で、2018年には842件の利用件数がありました。一方のSIAC(Singapore International Arbitration Center/シンガポール国際仲裁センター)は、1991年に 2._ICCとSIACの比較のポイント (1)_手続が厳格か柔軟か ICCは、原則として付託事項書(Terms of Reference:TOR)の義務的作成や、仲裁判断書の内容も仲裁廷とは別の担当者が内容面まで慎重に審査するなど手続が厳格なことが特徴です。TORとは、仲裁手続の初期に、各当事者が、請求の概要、求める救済の概要、損害賠償額、判断すべき SIACにおいては、以前はTORを作成していましたが、争点の整理のために手続が遅延するため義務付けを廃止しており、仲裁判断書は書記官が形式面をチェックする程度で、ICCと比べて柔軟な手続が行われることが特徴です。 実際に、ICCでは、仲裁の開始から仲裁判断がなされるまでの平均期間が26ヶ月であるのに対して、SIACでは、13.8ヶ月と如実な差が出ています。このような手続の厳格さも反映して、2019年においては、ICCでは、平均請求額が52百万米ドル(約56億円)となっているのに対して、SIACでは、平均請求額が27.86百万米ドル(約30億円)となっており、慎重な審理が必要な、複雑で高額な紛争はICCで審理される傾向になっています。 例えば、日本企業が関与したICCの案件として著名なものは、第一三共株式会社が、2008年のランバクシー・ラボラトリーズLtd.の株式取得に関し、米国司法省などの調査に関する重要な情報を (2)_費用 仲裁機関に対して支払う費用としては、仲裁管理費用や仲裁人報酬があり、かかる費用は係争額に 以下に、係争額が10百万米ドル(約10.7億円)の場合と、100百万米ドル(約107億円)の場合の |
係争額 | 費用 | ICC | SIAC |
---|---|---|---|
_10百万米ドル _(約10.7億円) |
_仲裁管理費用 | _57,515米ドル _(約600万円) |
_22,934米ドル _(約250万円) |
_仲裁人報酬 | _113,284米ドル _(約1,200万円) |
_93,669米ドル _(約1,000万円) |
|
_100百万米ドル _(約107億円) |
_仲裁管理費用 | _100,975米ドル _(約1,100万円) |
_51,259米ドル _(約550万円) |
_仲裁人報酬 | _214,584米ドル _(約2,300万円) |
_199,775米ドル _(約2,100万円) |
(3)_簡易仲裁手続(Expedited Procedure) 仲裁手続を合理的な費用で迅速に処理したいという要望に応えるため、各仲裁機関で簡易仲裁手続を導入する動きがあります。簡易仲裁とは、近年注目されている手続で、通常の仲裁手続に比べて、短い期間で、簡易な仲裁手続を行うものです。 SIACは、前述のように比較的近年に設立されたことから、新しい試みを積極的に行う傾向にあり、簡易仲裁手続を2010年から始めました(ICCは2017年に開始)。SIACにおいて、簡易仲裁手続の ICCも、2017年に簡易仲裁手続を導入しました。請求金額が2百万米ドル(約2.1億円)を超えないこと、又は当事者の合意により利用でき、原則1人の仲裁人により、進行協議会(Case Management Conference)から6ヶ月以内に仲裁判断がなされます。SIAC同様にヒアリングを行わないことができます。 上記のように、手続利用のための請求金額の設定はSIACの方が高く、簡易仲裁手続の門戸を広くしています。 3._仲裁機関選択のポイント 以上のICCとSIACの相違点を踏まえると、係争額が比較的大きく争点が複雑であれば、ICCで長期間をかけて慎重に手続を行い、他方で、コストや早期解決を志向する場合にはSIAC(場合によっては簡易仲裁手続)を選択する、ということも合理的な選択と思われます。契約交渉の際には、想定される争点や係争額を考慮した上で、事案に最適な仲裁機関を選択することが重要です。 例えば、商品売買契約の場合で、それほど高額な商品ではない場合は、商品の瑕疵・欠陥責任や 本年3月に、一般社団法人日本国際紛争解決センター(JIDRC)により、東京虎ノ門に、国際仲裁・ADR専用審問施設である「日本国際紛争解決センター(東京)(JIDRC-Tokyo)」が開設されました。同施設は、様々な仲裁機関における仲裁の審問手続で利用可能で、利用対象となる仲裁機関や (文責:飯島)
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