本ニュースレターでは、実際に新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けたと見られる米国のボーイング社によるブラジルのエンブラエル社の小型旅客機(リージョナル機)事業買収案件を題材に、M&A契約とMAC(Material Adverse Change)条項の論点をご紹介します。 なお、本件事案の概要は各種報道などの公表情報を元に構成しています。 |
||||||||||||||||
米国のボーイング社によるブラジルのエンブラエル社の 1._本件概要 ボーイング社(The Boeing Company)は、世界最大の航空宇宙機開発製造会社であり、米国唯一の大型旅客機メーカーであり、欧州エアバス社と世界市場を二分する超巨大企業です。他方、エンブラエル社(Empresa Brasileira de Aeronáutica S.A.)は、2010年代に大きく成長し、特に小型旅客機製造市場ではカナダのボンバルディア社と並ぶ二強ともいわれ、強い存在感があるブラジルの小型旅客機メーカーです。以下、本件の概要につき時系列に沿って簡単にご紹介します。
2._本件取引中止の発表とその後の動向 2020年4月24日までに、両社は買収合意の具体的な実施方法を決める予定でしたが、話し合いが これに対しエンブラエル社は、ボーイング社は不当に基本取引契約を終了させたとして、ボーイング社に対し、本件取引の実行及び42億ドルの買収価格の支払いを求めています(同社HP参照)。エンブラエル社は、ボーイング社が同社の財政状況や小型旅客機737 MAXの事故・生産停止などの影響から42億ドルの支払いを避けるために不当な主張を行っていると反論しています。 3._本件から得られる教訓 基本取引契約では、対象会社の事業などに重大な悪影響を及ぼす事由(Material Adverse Change(MAC事由))が発生した場合において、買い手が取引から離脱できる権利を規定するMAC条項が規定されています。同契約では、基本取引契約(Master Transaction Agreement)などの締結及びそれらに基づく行為、一般的な経済状況、対象会社の業界全体における変化、戦争やテロ、自然災害、法律や会計の変更、対象事業などの事業計画・予測の未達、金融市場の変化、コモディティの価格・状況など市況の変化などと並んで、「epidemic or pandemic, in each case, after the date hereof, whether or not pursuant to a declaration of an emergency(以下略)」として、緊急事態宣言を伴うか否かを問わず、感染症やパンデミックがMAC事由の例外(Carve-out規定)として明記されています。 ただし、この例外規定(Carve-out規定)は、同業他社に比べて対象会社・事業に不均衡な影響(disproportionate effect)がある場合に限り、MAC事由に該当するという二段階目の限定が設けられています。この点が論点となれば、今後COVID-19の影響が航空業界全体に及んでいるのか、エンブラエル社の対象事業に特に不均衡な影響を及んでいるのかといった議論がなされるものと MAC条項については、”material adverse effect”や”disproportional effect”など基準が曖昧であることは否定できず、またMAC発生の判断期間として年単位で見るべきとの見解もあり、一般的に 当事務所は、クライアントの皆様が直面することが想定される国境を跨ぐ法律問題に関し、皆様が迅速に対応できるよう、全力でかつ機動的にご支援させていただきたいと考えております。 (文責:岩崎) 私どもに何かお手伝いできることがあれば、ぜひお気軽にお問合せください。 |
||||||||||||||||
【UPDATE】新型コロナウィルス感染症に関する各国政府の対応策 |
[お問い合わせ先] 東京国際法律事務所 〒100−0013 東京都千代田区霞が関1-4-2 大同生命霞が関ビル8階 Tel: 03-6273-3120(代表) https://www.tkilaw.com/ お問い合わせ、配信停止はこちらから newsletter@tkilaw.com 森幹晴 代表パートナー 弁護士 Tel: 03-6273-3504(直通) E-mail: mikiharu.mori@tkilaw.com 山田広毅 代表パートナー 弁護士 Tel: 03-6273-3503(直通) E-mail: koki.yamada@tkilaw.com |
発行:東京国際法律事務所 Copyright (C) Tokyo International Law Office All Rights Reserved. |