OUR STORY

2021.11.09

リーガル領域で先陣を切る立場でありたい 「人」と向き合い歩んできた自分だけの道

合理性が求められる企業法務やビジネスの世界において、「義理と人情」は一見相容れない印象があります。しかし、岩崎大弁護士は、これまで常に「人」と真摯に向き合うことを大切にしてきたといいます。卸売業を営む父親からの教え、高校・大学での水泳部での練習の日々、ブラジルやコロンビアといった新興国での仕事、そして東京国際法律事務所(以下、TKI)への参画—これまでの岩崎弁護士の人生経験に裏打ちされたその思いに迫りました。

家業を通じて感じた「人と人をつなぐ」ことの価値

岩崎弁護士が普段取り組まれている案件について教えてください。

国内外のM&Aが中心です。また、M&Aに付随して発生する競争法関連の問題解決に向けたサポートも行っています。仮に日本企業同士で合弁企業をつくる場合でも域外適用が問題になる等、競争法は近年避けては通れないテーマです。

また、訴訟・紛争に関する案件にも対応しています。最近では労務に関するご相談も増えてきていますね。各種契約のトラブル等をいかにスムーズに解決に導けるか訴訟の場面を通じたサポートをさせていただいています。

加えて、株主総会・取締役会議事録関連や企業の日常取引に関するご相談、コンプライアンス対応(各国競争法、GDPRや中国等各国のデータ保護関連等グローバルな視点から日本国内のレギュレーション・当局への対応まで)等を含む一般的な企業法務案件も行っています。

限りある時間のなかでプロフェッショナルとして全力を投じつつも、日々向き合う人との出会いとつながりを大切に、いつでも気軽に相談してもらえるような弁護士でありたいと思っています。

弁護士を目指そうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

私の実家は、大正時代の曾祖父のころから医薬品等の専門卸売業を営んでいました。私が学生のころに主たる事業を同業他社に譲渡することになったことを父より聞き、当該事業を引き継ぐことの道のりの難しさを知りました。このとき、個人としてプロフェッショナルな仕事を手掛けて強くなっていきたいという思いを持ったことがきっかけの1つです。また、父の大切にしていた「人と人をつなぐ」という価値を生み出す仕事でもあると考え、弁護士という職業に魅力を感じました。

弁護士として「人と人をつなぐ」ことの価値を生み出すために、普段心がけていることはありますか。

「縁を大切に」、そして「先を読む」という2点です。我々TKIのクライアントは企業ですが、突き詰めると企業は個人の集まりです。直接的には経営企画や法務の方々とやり取りをしますが、その先には事業部の方々がいらっしゃいます。そうした目の前の依頼者の一歩先の人々のことまで考えてアドバイスをするように心がけています。

たとえば、「事業部の同意を得てほしい」と経営企画や法務部等の依頼者の担当者に伝えるときに、どのように事業部の方々に知らせるべきなのかといったことまで、事業の背景やクライアントのカルチャーにあわせて具体的なアドバイスをしていくことがとても重要です。

こうした考え方は、私の父親の影響も大きいと思います。卸売業は製造業者からモノを仕入れ、小売業者へモノを販売することがその商売の骨格です。父親は、「ただモノを右から左へではなく、何が人に又は時代に必要とされるかを考え、一工夫・付加価値を加える」という思いで事業に取り組んでいました。私もこの思いをつなぎ、受け手のニーズを考え、伝えるタイミング・伝え方を工夫して、企業の皆様がよりよい社会を実現していくためのサポートをしていきたいと考えています。

「未踏領域」を切り開く日本企業のために

岩崎弁護士は、米国への留学および事務所勤務の後に、コロンビアとブラジルの法律事務所でご活躍されていますね。新興国へ興味を持たれた理由を教えてください。

少子高齢化によって国内マーケットが縮小していくなか、日本企業には、より大きなグローバルマーケットに挑戦する企業や企業戦士が多くいます。私はそうした企業やそこで勤める皆様と一緒に「未踏領域」を切り開くパートナーとしてサポートしていきたい、日本企業のために先陣を切っていく存在でありたい、と思っています。

その切り開くべき「未踏領域」の1つが、新興国に関する案件です。ブラジルやコロンビアは、日本からは地理的に最も遠い地域ですが、豊富なエネルギー・鉱物資源、食料生産能力があります。さらに、経済規模・人口等の市場規模を見ても大きな潜在能力を有しています。そうした新興国の経済的なポテンシャルは、非常に魅力的です。

個人的なモチベーションとしては、行ったことがないところに飛び込んでみたいという思いが強いですね。高校・大学時代には水泳に打ち込んでいたり、日本中を自転車で周ったりという経験をしました。体を張るような勝負や誰もしていない経験・場数を踏んできたからこそ、クライアントの皆様がおかれている様々な状況の課題解決に寄り添い、力になれる場面もあるのではないかと考えています。

また、私が何よりも惹かれ続けているのは、ブラジルを含む南米に住む現地ブラジル人はもちろん、移民の歴史を超えてつながった日系人等素敵な人たちとの出会いでした。現地では、子どもを連れて電車に乗ると必ず席を譲ってもらえる等、非常に優しい方が多く、人と人との距離の近さが印象に残っています。

一方で、新興国の案件においては大変な部分も多くあると思います。

新興国では、仕事の面でも日常生活の面でも先進国とは異なり、思いどおりに物事が進まないことが多いです。インフラが弱い面が多く、日本と同じようには生活できません。

案件の特徴としても、そもそも法律のできが決してよくないことや、加えて、法律があっても実際の運用に関しては解釈が分かれるようなことがあったり、州・連邦法での記載の矛盾や法律内での整合的な文言の理解が難しいこともあったり、さらに、現地のアドバイザーへの信頼度をはかることが難しく、時間どおりに物事がまるで進まず、進む度にむしろ課題がどんどん発見されることもあります。

些細なことも含めて、自分の思いどおりにいかないときにどうすべきか、という問題が常に付きまとうのです。

ここでこそ「人と人とのつながり」の価値が発揮されます。困っている状況を率直に伝えることで、助けてくれる人たちもいます。信頼できる人々との縁を大切にし、現場で働く日本企業の駐在員の皆様、日本本社の方、現地のアドバイザー、相手方、相手方のアドバイザー等、関係者をいかに丁寧にかつスムーズにつないでいくかという視点が非常に重要です。

「東京国際法律事務所を一緒に創り上げていきたい」

アンダーソン・毛利・友常法律事務所に在籍されていたころには、ヤフーへ出向されていた時期があったそうですね。テクノロジーやデジタル分野に対してはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

ヤフーではM&Aとロビイングを主に担当していました。当時はちょうどスマートフォンの普及期だったので、テクノロジーが進化するスピード感や拡大するグローバルへのアクセス可能性を、身を持って感じていました。人々の豊かな生活の発展という視点で見ても、テクノロジー領域に対するアンテナを張っておくことは重要だと思っています。

特に、デジタル領域のビジネスについては新業種・新業態ということもあり、法律が予定していない場面・組み合わせが多々あります。ヤフーに出向している期間にも、自由な発想にあふれた人に数多く出会いました。

契約は二当事者間で締結するのが基本型ですが、彼らの頭のなかには二当事者どころではなく、非常に多くの当事者を巻き込みつなぐビジネスモデルがあるのです。

この人たちの自由な発想をどうやったら契約書に具体化できるか—常識に照らしたうえ、物事を正しく行うことに難しい判断を要する場面もあります。しかし、我々ロイヤーは、書面屋ではなく、課題を解決する人です。新たな価値創造に挑戦していく人たちをサポートするという観点から、人と人との信頼関係の構築が進むような取り組みを行っていくことが大切だと考えています。

TKIには設立時から参画されていますね。そこにはどのような思いがあったのでしょうか。

私自身、日本企業が関連する新興国の案件において、日本の法律事務所ではなく欧米の法律事務所がリードカウンセルになる場面を何度も見聞きし、歯がゆい思いをしてきました。しかしながら、日本企業のことをいちばんよく理解しているのは、日本の法律事務所や日本の弁護士であり、そこに活躍の場は多くあるはずです。

「早く行きたければ、1人で行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け(fast alone, far together)」という新興国アフリカのことわざのとおり、日本発のグローバルファームを目指すTKIの仲間たちと共に、遠くにある目標・山をしっかりと見据え、着実に登頂したいと考えました。

岩崎弁護士の今後のビジョンをお聞かせください。

TKIを一緒に創り上げていく仲間を増やしていきたいと思っています。そのために、仲間とのやり取りにおいても、「だれかのせいで働かされている」といった環境ではなく、「この仕事をモノにしたい」「もっと成長したい」「誰かに恩を返したい」といった個人の目標や思いがチームの目標に近づくよう、また、よいチームの雰囲気を創れるよう日々助力しています。新人の仲間探しに力を入れているのも、そうした活動の一環です。現在は76期司法修習予定者向けの仲間を探す準備も行っているので、次世代を担う若人にとって、TKIがよい出会いの場を提供できることを楽しみにしています。

(文:周藤 瞳美、取材・編集:周藤 瞳美・松本慎一郎、写真:弘田 充)