OUR STORY

2022.05.09

外資系企業に鍛えられた経験を日本企業の武器に変える

幼少期に米国で過ごした経験から、日米の架け橋となる仕事を希望して米国大手法律事務所へ。堀池雅之弁護士は同事務所で13年間、日本企業による海外企業の買収・投資、海外企業による日本企業の買収・投資等、アウトバウンド・インバウンド双方を含む多様なクロスボーダー案件を手掛けてきました。

そして2022年1月東京国際法律事務所(以下、TKI)へ参画。クロスボーダーのM&A案件をはじめとする豊富な経験に裏打ちされた胆力で新しいフィールドに挑みます。

日本法の弁護士であっても、クロスボーダー案件を十分リードできる

堀池弁護士はこれまでどのような弁護士を目指されてきましたか。

「ビジネス」がわかる弁護士であることを心掛けています。若手の頃、国内大手の医療機器会社へ出向した際、出向先の法務部長から「まずは依頼者である事業部と雑談せよ。背景にある事業に興味を持て。」と強く言われていた影響が大きいかと思います。

クライアントが手掛けるあるいは投資対象のビジネスを理解してはじめて、契約書のドラフト作成ができると考えています。そのために日々の法改正をチェックするだけでなく、事業の最前線にいるクライアントから業界の動向や実務のニーズについて聞き取りをするようにしています。

また、クライアントがどのような過程を経て外部の法律事務所に依頼しているのか、出向時代に身をもって体感しました。プロフェッショナルなアドバイスをする以前の話として、法律事務所に相談に来ていただいた担当者の案件における想いや希望に寄り添ったアドバイスができる弁護士でありたいと常々考えています。

出向時代に受けた影響を強く持たれているのですね。13年の米国大手法律事務所での経験を経てTKIへ参画された理由を教えてください。

「日本発のグローバルトップファームをつくる」というTKIのミッションに強く共感し、チームの一員としてTKIを大きくしていきたいと考えました。

日本企業が海外企業を買収する場合、「まずは現地の法律事務所に任せよう」という発想や風潮にかねてから強い問題意識を持っていました。なぜ日本の弁護士がアウトバウンド案件をリードしていかないのかという疑問です。

この点については、米国に留学しその後前職事務所のシリコンバレーオフィスで数多くのM&A案件をアドバイスすることで、日本の弁護士であってもドラフト、契約交渉を含めてクロスボーダー案件を十分リードしていけると感じました。実際に、日本に帰国した後は数多くのクロスボーダーのM&A案件を自らがリードしてクローズしています。

同じような問題意識は、TKIの共同代表である森弁護士、山田弁護士も持っています。また、TKIには日本法弁護士だけでなく、様々な国の外国法弁護士も多数在籍しています。TKIに参画することで自分の問題意識を解決でき、ミッションを実現していけると思いました。

クライアントにとってベストな仕事を追求されてきたからこその決断だったように感じます。実際にTKIに参画されてみていかがですか。

TKIのメンバーは皆、自分たちで案件をリードしようという意識を強く持っていると感じます。現在もメンバーが増えており、チーム全体としての熱量も高いです。

若手弁護士への教育体制が手厚いことも、TKIの特徴の1つだと思います。クライアントのために良いアウトプットを出すには、若手弁護士を含めた強いチームを作ることが非常に重要です。TKIではチームワークを重視しており、若手への教育はもちろん、事務所全体へのナレッジシェアも評価制度の評価項目の一つとなっています。事務所が一丸となって良質な仕事をする環境が整っている点も強みです。

外資系クライアントとのやり取りは、弁護士としての成長の機会

堀池弁護士の強みは、クロスボーダー案件の経験を豊富に有していることだと思います。

これまでインバウンドとアウトバウンドのM&A・投資案件を数多く手掛けてきました。分野でいえば、最近はテック関係や太陽光、風力、バイオマス等の再生可能エネルギーの案件が多いです。例えば、クライアントの日本企業が海外のAI企業を買収する案件では、オープンソース・ソフトウェアに関するDDを現地の法律事務所と協働して行い、買収に関するドラフティング、契約の交渉を行いました。

私たち弁護士は、クライアントによって鍛えられています。特にクロスボーダー案件では、外資系クライアントからは各々の法体系のマインドに基づく質問をされますが、これらの質問に対する一つ一つの検討、回答が貴重な経験となってきました。

クライアントとのやり取りのなかで、印象的なエピソードはありますか。

外資系企業を代理して日本国内の事業を売却した案件では、交渉の最終局面において、合意していた期日までに内容を固めるために18時から翌朝9時まで相手方と議論したのは今でもよく覚えています。契約締結直前で売買のストラクチャーが変わり、当初売買金額はクロージング時の一括払いでしたが、途中で譲渡価格の一部がクロージング後のマイルストーンでの支払いとなりました。契約上の買主自身はSPCであったため、クライアントと信用補完の方法とその範囲、費用対効果について議論しました。特に担保については各国で法制度やコンセプトが違うため、クライアントの方でイメージが湧くように具体的な当てはめを行い説明しました。

結果、実務的に当事者間の取引上の制約がある中で「第三者のためにする契約」を締結する等の工夫を行い、短期間で買主と交渉し案件をまとめることができました。

「クロスボーダーM&A」と「再生可能エネルギー」の二本柱で事務所の発展に貢献

これまでの経験を生かして、TKIではどのように活躍されたいですか。

引き続き、クロスボーダーのM&A案件に取り組んでいく予定です。外資系クライアントや前職の米国大手法律事務所の同僚と仕事をして学んだ、別の法体系の人間の考え方や動き方についての理解をベースに、今後もアドバイスをしていきたいと思います。各業界はグローバルな競争にさらされており、今後は海外市場での投資や買収だけでなく、国内市場においても外資系企業が競争者、相手方、パートナーとなる案件が増えています。その際に日本企業に寄り添ったサポートをするため、この経験を役立てていきたいと思っています。

外資系企業を代理して日本企業に投資するインバウンドの仕事も増やしていきたいです。TKIには様々な国の資格やバックグラウンドを持つ弁護士が所属しているので、事務所としての総合力を生かし、クライアントに対して多角的な観点からアドバイスをしていきたいです。

また、もう1つの軸である再生可能エネルギーの仕事も引き続き拡大していく所存です。現在、太陽光を始めとする再生可能エネルギー分野では、発電事業者は、FIT制度での売電に代わるものとして、需要家となる企業と電力購入契約(PPA)を締結するコーポレートPPAに注目をしています。コーポレートPPAは、海外と比較すると日本では普及が遅れているものの、実務として拡大・定着しようとしている段階にきており、実際各クライアントからのコーポレートPPAに関する相談も増えてきています。自らの専門性を活かして、この新しい領域を含めた再生可能エネルギーの業務をTKIの大きな柱の1つとなるよう発展させていければと思っています。

(文:周藤 瞳美、取材・編集:周藤 瞳美・松本慎一郎)