INFORMATION

2020.07.03

【コラム】香港国家安全維持法案の施行による日本企業への影響

INSIGHT

2020年6月30日、中国の全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で香港国家安全維持法案(National Security Law)が可決され、同法は7月1日に施行されました。この流れのなかで、米国政府は6月30日、「米国は香港の自由と自治に対する抑圧への強力な対抗措置をとり続ける」と警告する声明を出しています。このように香港の「一国二制度」という高度な自治が崩壊するのではないかとの懸念が米国を含めた各国で広がっています。

香港は米国から貿易などで優遇措置を受けていますが、米国由来の製品の香港への輸出や再輸出(例えば、米国由来の製品を米国から日本へ輸入し、それを日本から香港へ輸出する場合)に関し、米国輸出管理規則(EAR)の規制が厳格に適用されるなどの影響が出始めています。

そこで、本コラムでは、香港国家安全維持法案の施行による日本企業への影響についてご紹介します。

なお、下記の情報は、 THOMPSON HINE より提供いただいています(2020年6月1日付POST同月30日付POST)。

香港国家安全維持法案の施行による日本企業への影響

香港は現在、中国と比較して米国との間で優遇措置を受けていますが、これは1997年に中国が香港の経済的、行政的な面での自治を継続することを認めた結果です。最近の報道記事が示すように、中国は、司法の独立性、民主主義の限界、一層と厳しくなる警察の活動などをめぐって、2019年6月に始まった香港の抗議行動の取り締まりを強化し、米国は中国に対し、香港を特別行政区として維持するという従前の公約を遵守し、取り締まり強化を緩和するよう圧力をかけてきました。
しかし、むしろ状況は激化するばかりであり、昨年末より中国、米国及びその他の国のリーダーによる重要な動きがあります。

2019年11月、米国トランプ大統領は2019年香港人権・民主主義法に署名し、香港に対し米国法上の優遇措置の享受を継続させるかどうかについて、国務長官に毎年の検証を求めています。

米国マイク・ポンペオ国務長官は、2020年5月27日、「香港が中国からの高度な自治を維持していると主張できる人はいない」と述べ、香港がもはや優遇措置を受ける必要がないことを議会に証明するであろうと発表しました。

同月28日、米国、オーストラリア、カナダ、英国の各政府は、「中国政府が香港に国家安全法を適用・執行する旨の決定を下したことは、香港の安定と繁栄を危険にさらすものであり、深い懸念を抱いている」と指摘する公式声明を発表しました。

同月29日、トランプ大統領は報道陣への発言の中で、中国の行動パターンを引き合いに出し、以下のようないくつかの措置を採る予定である旨を発表しました。

  • 香港に(中国と異なる)特別待遇を与える政策撤廃の検討開始
  • 大学における重要研究のより確実な保護、及び、中国から特定の外国人の入国停止のために必要な発令
  • 香港の自治権の侵害に直接又は間接に関与した中国と香港の当局者を制裁するために必要な措置の実施
  • 中国治安当局による監視の危険性が高まっていることを反映して、香港への渡航勧告の改訂

6月29日、米国国務長官は、米国から香港への米国産防衛装備品の輸出を終了し、「米国の防衛技術やデュアルユース技術について、中国と同様の制限を香港に課すことに向けた措置を講じる」と発表しました。また、米国国務長官は、「もはや香港への規制品目の輸出と中国本土への輸出を区別することはできない。これらの品目が人民解放軍の手に落ちる危険を冒すことはできない」とも述べています。

国務省の国防貿易管理局(Department of State’s Directorate of Defense Trade Controls:DDTC)から規制変更の正式な通知は現在までに公表されていませんが、関係者は、2020年6月30日時点で、国際武器取引規制(International Traffic in Arms Regulations:ITAR)に基づくすべての国防/軍需品の輸出は、一般的な拒否方針(general policy of denial)の下で輸出許可のための審査を受けることになると想定する必要があります。

同月30日、商務省産業安全保障局(Bureau of Industry and Security:BIS)は、「商務省産業安全保障局は香港への輸出、香港への再輸出、及び輸出管理規則(Export Administration Regulations:EAR)15 CFR Part 730-774(連邦行政命令集)の対象品目の香港国内での移転について、中国が利用可能なものと異なる扱いにて行うことを停止する」との声明を発表しました。この結果、輸出管理規則の対象品目は、香港に輸出することができなくなりました。

なお、商務省産業安全保障局は、2020年6月30日時点で船積みのためにドック上、水上コンテナ上に積載されていた品目、輸出船若しくは輸送船に積載されていた品目、又は輸送船に積載され輸出港若しくは再輸出港に向かう途中にあった香港向けの品目の出荷は、従前通り目的地に向かうことができることを明らかにしました。加えて、2020年6月30日まで有効であった許可例外(License Exception)により承認された一定の香港人の関与する取引については、2020年8月28日までは引き続き承認されることとなっています。

香港国家安全維持法の施行に伴い、米国を含めた各国による今後の動きは米国子会社を持つ日本企業のみならず、米国由来の製品を取り扱う企業の皆様のクロスボーダー取引に引き続き影響を与える可能性があり、注視する必要があります。

(執筆担当者:岩崎


※本記事の内容は、一般的な情報提供であり、具体的な法的アドバイスではありません。
ご質問などございましたら、下記弁護士までご遠慮なくご連絡ください。

連絡先:岩崎 大 Tel: 03-6273-3544(直通)E-mail: dai.iwasaki@tkilaw.com