M&A(企業買収等)コーポレートガバナンス規制・当局対応

【コラム】 外商投資法の猶予期間満了に伴う株主会設置等の実務対応について

外商投資法の猶予期間満了に伴う株主会設置等の実務対応について

はじめに

「中華人民共和国外商投資法」(以下「外商投資法」といいます。)及び「中華人民共和国外商投資法実施条例」(以下「外商投資法実施条例」といいます。)が2020年1月1日に施行されてから(「中外合弁経営企業法」、「外資独資企業法」及び「中外合作経営企業法」(以下総称して「外資三法」といいます。)が廃止されてから)4年が経ち、2024年で5年目を迎えています。

外商投資法第31条によると、外商投資企業の組織形態、組織機構及びその活動準則は、「中華人民共和国会社法」(以下「会社法」といいます。)に従わなければならないと定められており、外商投資法第42条では、外商投資企業の組織形態及び組織機構について外商投資法の施行後5年間の猶予期間が設けられています。

しかし、外商投資法実施条例第44条2項によると、2025年1月1日以降、従来の外資三法に基づき設立されていた外商投資企業の組織形態及び組織機構等が会社法に基づき変更されていない場合、市場監督管理部門は当該外商投資企業によるその他の登記事項に関する変更登記申請を受理せず、当該状況の公表を行うとされています。

現実問題として、外資三法に基づいて設立されている既存の外商投資企業(特に中外合弁企業)の多くは、董事会を会社の最高意思決定機関としており、これらの企業は、会社法に基づき、2024年12月31日までに株主会を最高意思決定機関として設置しなければなりません。本稿では、中外合弁企業を中心にその組織形態及び組織機構の変更等に関する実務対応のポイントについて、ご説明します。

1. 組織形態及び組織機構等に関する実務対応のポイント

(1) 最高意思決定機関の変更

外商投資法施行前では、中外合弁企業は中外合弁経営企業法実施条例(以下「経営企業法実施条例」といいます。)第30条に基づき、董事会が最高意思決定機関となっていましたが、外商投資法施行後は、会社法第36条に基づき、新たに株主会を設置し、株主会を最高意思決定機関とする必要があります。また、この変更に伴い、会議体の招集権者の変更も必要となりました。具体的には董事会を最高意思決定機関とする場合、董事会の定例会議は董事長が招集し、主宰するとされています。董事長が董事会を招集できないときには、董事長が副董事長その他の董事に招集、及び主宰を委託することとされ、さらに、3分の1以上の董事の提議があれば、董事長は臨時董事会を開くことができるとされています(経営企業法実施条例第32条)。

これに対して、株主会を設置する場合、10分の1以上の議決権を有する株主、3分の1以上の董事、又は監事会もしくは監事の提議があれば、臨時会議を開かなければなりません(会社法第39条)。また、株主会の招集又は主宰順位は、①董事長もしくは執行董事(2024年7月1日に施行される改定後の会社法(以下「新会社法」といいます。)では、執行董事の名称は削除されています。)、②副董事長、③半数以上の董事が共同で推薦する1名の董事、④監事会もしくは監事、⑤10分の1以上の議決権を有する株主とされています(会社法第40条)。したがって、株主会を設置する場合を前提に、招集権者及び株主会の招集又は主宰順位について、定款において変更する必要があります。

(2) 重要な決議事項の変更

前述(1)の変更に伴い、董事会の全会一致事項を株主会における三分の二の決議事項、又はそれよりも厳しい議決要件である株主会における全会一致の決議事項として定款で定めることが可能となりました。具体的には①定款の修正、②営業の一時停止・解散、③増資・減資、④合併・分割は、株主会における三分の二以上の決議事項とすることが可能となります(会社法43条2項)。中外合弁企業の増資の過程で、中国側の株主は追加増資できずに、日本側の株主の追加増資のみが行われるケースが多々あり、日本側の株主は三分の二以上の支配株主となっているにもかかわらず、全会一致事項については、中国側の董事と全員で決議しなければならないことになっていました。しかし、株主会における三分の二の決議事項に変更することで、日本側の株主は当該決議事項を単独で決議することが可能となりました。

また、会社法第37条に基づき、株主会は、次に掲げる権限を行使するとされていますが、以下のvi、viii、iv以外の決議事項は、通常株主会における過半数事項となります(新会社法の第66条第2項によると、以下のvi、viii、iv以外の決議事項は必ず過半数事項によらなければならないことが明確になりました。)。

  1. 会社の経営方針及び投資計画を決定すること(新会社法では、この内容が削除されています。)
  2. 従業員代表でない者が務める董事及び監事を選出し及び更迭し、董事及び監事の報酬に関する事項を決定すること
  3. 董事会の報告を審議し承認すること
  4. 監事会又は監事の報告を審議し承認すること
  5. 会社の年度財務予算案及び決算案を審議し承認すること(新会社法では、この内容が削除されています。)
  6. 会社の利益配当案又は欠損補填案を審議し承認すること
  7. 会社の登録資本金の増加又は減少について決議を行うこと
  8. 社債発行について決議を行うこと
  9. 会社の合併、分割、解散、清算又は会社形態の変更について決議を行うこと
  10. 会社定款を修正すること
  11. 会社定款に定めるその他の権限

(3) 組織構成の変更

外商投資法施行前に、中外合弁企業の場合、その組織構成は、①董事会、②監事会又は監事、③高級管理職となっていましたが、外商投資法施行後は、その組織構成は、会社法に基づき、①株主会、②監事会又は監事、③董事会又は執行董事、及び④総経理に変更する必要があります。従前、董事会を最高権力機構としていましたが、これを株主会の下位機関に位置付ける必要があります。

(4) その他の変更

外資三法下では、董事長は合弁企業の法定代表者であるとされていましたが(中外合弁経営企業法実施条例第34条)、会社法においては会社の法定代表者は、会社定款の規定に従い、董事長、執行董事又は総経理が就任し、かつ法に従い登記するとされており(会社法第13条)、法定代表者について会社の定款において定めることとなります。従って、法定代表者の任命につき合弁相手と協議し、変更することが可能となりました。

また、中外合弁企業の持分譲渡については、従来、各合弁当事者の同意を得なければならないとされていましたが(中外合弁企業法第4条)、会社法においては、既存の株主に対して持分を譲渡する場合、その他の株主の同意を得る必要はなく、株主が株主以外の者に持分を譲渡する場合、原則的に(例外として、会社の定款に持分譲渡について別段の規定がある場合、その規定に従うとされています。)その他の株主の過半数の同意を得なければならないとされています(会社法第71条)。したがって、持分譲渡に関する定めを定款において変更する必要はありますが、外資三法の時代と比べると、持分譲渡が容易になったと考えられます。

さらに、従前、董事は合弁各者が任命するとされており(中外合弁経営企業法第6条)、会社法においては従業員代表ではない董事は株主会により選出される(会社法第37条第2号)とされているため、董事の選任については合弁当事者の合意による決定から、株主会による選出に変更する必要があるなど、定款において他にも変更すべき点があります。

2. 留意すべき点

前述のとおり、2025年1月1日以降外商投資企業の組織形態、組織機構等が会社法に基づき変更されていない場合、市場監督管理部門は当該外商投資企業によるその他の登記事項に関する変更登記申請を受理しないとされています。当該登記事項とは、①会社の名称、②会社類型、③経営範囲、④会社住所、⑤登録資本、⑥法定代表者氏名、⑦会社の株主です。いずれも重要な登記事項であるため、2024年12月31日までに組織形態、組織機構等を会社法に基づき定款を変更する必要があります。

また、定款の変更に伴い、必要に応じて合弁契約書を修正する必要があるので、この点も留意する必要があります(外商投資法施行後、合弁契約書の作成は必須とされておらず、合弁契約の変更は市場監督管理部門への登記・届出事項ではありませんが、当該契約書を作成されるのが一般的です。)。

(執筆担当者:福原


※本記事の内容は、一般的な情報提供であり、具体的な法的又は税務アドバイスではありません。
ご質問などございましたら、ご遠慮なくご連絡ください。

唐 紅海
Tel: 050-5784-3063(直通)
E-mail: honghai.tang@tkilaw.com
福原 聡
Tel: 050-5784-3053(直通)
E-mail: satoshi.fukuhara@tkilaw.com