【TKI Voice】AIの社内実装、部門横断型のタスクフォースで推進を
AIの社内実装、部門横断型のタスクフォースで推進を
本稿は、2026年1月開催セミナー「AIと法務対応のネクストステップ」での議論を踏まえ、AIの社内実装をどのような体制で進めるべきかを整理したものです。
1. AIと法の現在地点
日本では、AIを包括的に規制する単一の法令は存在せず、個人情報保護法や著作権法等の既存法令及び各種ガイドラインを踏まえ、論点ごとに個別具体的な検討を行う必要があります。
こうした規制の状況を踏まえ、先行企業では体制整備を進めていますが、対応が遅れれば競争力の低下や責任追及のリスクが生じます。規制を確認するだけでなく、関連する論点を業務に組み込み、実効的に運用する「実装フェーズ」こそが重要といえます。
2. 実装フェーズにおけるステップ
AIは進化のスピードが速く、社内規程を策定した後も、状況に応じたアップデートが必要です。

Step1 ) AI利用規程・ガイドラインの策定
従業員が安全にAIを利用できるよう、入力可能情報、禁止事項やアウトプットの確認方法などを明確にした規程の整備が重要です。策定にあたっては、法務部門に限らず実際のユーザも含めた部門横断での検討が効果的です。
Step2) 社内体制の整備
利用可能なAIをホワイトリスト化して明示したり、情報セキュリティ部門を中心に法務も関与してあらかじめ審査基準を整備したうえで、AIサービスの審査を行う体制が望ましいといえます。また、部門横断型の体制だけでなく、AI利用にかかる相談窓口も設けることで、円滑な運用が可能となります。
Step3) 外部対応・社外への説明責任
AI利活用の観点では、取引先(例えばAIベンダー)との契約関係を適切に規律するのみならず、AIベンダー等AI提供者側であればAIユーザ(顧客)への説明責任を踏まえた外部対応も重要です。具体的には、ベンダー契約では、データの権利帰属や管理方法、漏洩時の責任範囲などを明確化し、自社のリスク許容度に基づいて対応方針を整理する必要があります。また、AIユーザ(顧客)に対してはAI利用の事実やメリット・リスクを適切に説明し、問題発生時には契約上の責任の有無にかかわらず、透明性のある対応を行うことが求められます。
Step4) モニタリング体制の構築
各種体制の運用開始後は、規程や体制の遵守状況を定期的にモニタリングし、法改正や技術動向(AIの進化)に応じて継続的に見直すことが重要です。また、費用対効果を踏まえ、合理的な範囲でモニタリング体制を整備することが求められます。
3. タスクフォースモデルの採用
AIビジネス法務では、契約・紛争対応といった法的専門性に加え、システム構成やデータフロー、事業モデルへの理解といった技術・事業面の知見も求められます。こうした視点の統合が不十分な場合、部門間や外部との情報の非対称性がリスクにつながります。
このような背景を踏まえ、AIの社内実装を実効的に進めるには、法務・知財・情報セキュリティ・事業部門による部門横断型タスクフォースの設置が効果的です。
4. 外部弁護士の活用
タスクフォースを組成したら、
①現状分析と論点整理
②優先事項等の峻別
③To Doの実行と体制構築
④継続的な見直し、という段階的アプローチをとり、マネジメント層の関与・理解を得ながら、全社的な運用体制へ落とし込むことが重要となります。
タスクフォースには、外部弁護士等の専門家を加えることも効果的です。第三者的視点を取り入れることで、規制解釈や業界水準、潜在的リスク等を早期に把握できます。
弊所では、規制動向を踏まえたリスク分析、AIベンダー契約のレビュー、契約審査基準の整備、データ利活用スキームの法的整理、社内ガイドライン策定支援、ガバナンス体制設計への助言等を通じ、業界水準を踏まえ、実装フェーズ全体を伴走型で支援しておりますので、ご質問・ご相談等ありましたらいつでもお問い合わせください。
5. 終わりに
AIと法務対応の社内実装は一過性の対応ではなく、部門横断的な体制のもとで全社一貫かつ継続的に取り組むべき経営課題です。早期に体制整備へ着手することが、将来的なリスク低減と事業上の競争力確保につながるといえます。
最後に、本セミナーでは、実装フェーズにおける各Stepの達成度合いを確認するための「チェックリスト」をご紹介しております。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
※本記事の内容は、一般的な情報提供であり、具体的な法的又は税務アドバイスではありません。
ご質問などございましたら、ご遠慮なくご連絡ください。

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