【コラム】書面審理仲裁 :迅速性、公平性、そして執行可能な解決
書面審理仲裁 :迅速性、公平性、そして執行可能な解決
本稿は英語で作成された原文をもとに日本語要約を掲載しています。英語版の全文記事は以下よりご覧いただけます。 “Documents-Only Arbitration: Fast, Fair, and Enforceable”.
Executive Summary/ Key Questions
- 1. 主流な選択肢への移行
ー 書面審理のみによる仲裁は、手続の比例性、迅速な審理期間および予測可能な費用を求めるクライアントの需要に後押しされ、限定的な例外策から主流な選択肢へと移行しています。
ー JCAA(日本商事仲裁協会)商事仲裁規則(2021)の下では、請求額が3億円以下の紛争には迅速仲裁手続が自動的に適用され、書面ベースで手続きが進行し、通常は3ヶ月または6ヶ月以内に最終な仲裁判断が下されます。 -
2. 書面心理仲裁のメリットとデメリット
ー 価値を発揮するケース: 契約解釈、書面による記録および客観的記録が争点となる紛争において、書面審理は真の価値を発揮します。
ー リスクとなるケース: 信用性や、口頭での表明および事実関係に争いがある紛争では、書面審理は適しておらず、執行可能性の観点からリスクが高まります。 -
3. 書面審理手続に進む前に確認すべき「4つの問い」
ー (1) 紛争は、本当に書面記録に適しているのか?
書面審理のみの手続は、契約解釈、支払記録、スケジュールおよび客観的な履行指標が争点となる場合に優れた効果を発揮します。逆に、証拠の信用性、口頭での表明、または主観的意図が中心となる場合は逆効果になります。 もし、答えが「どちらとも言える(混在している)」場合には、審問の全面的な放棄ではなく、対象を絞った証人証言を取り入れたハイブリッドな手続設計を検討すべきです。
ー (2) 「書面審理のみ」の定義は何か?
「書面審理のみ」という言葉は、証拠調べ期日(審問)を行わないこと、口頭弁論を行わないこと、証人の陳述書を提出しないこと、あるいはその全てを意味する場合があります。 これらの手続上の選択肢を混同してしまうと、執行可能性に関するリスクの主な原因となります。
ー (3) 第1号手続規則(PO1)は、必要な機能を果たしているか?
PO1においては、合意された「書面審理のみ」の具体的な意味の明記、ページ数や証拠数の上限設定、「新たな主張の追加禁止」期限の設定および仲裁廷からの質問や限定的な文書提出要請に対応するための明確なメカニズムを構築する必要があります。
ー (4) 人証の扱いについて、意識的な意思決定を行ったか?
人証は、証言の信用性、相手方の言動への依拠(信頼)または指示内容に争いのある場合や書面記録だけでは重要な事実関係を確実に解明できない場合に、真の証明力を持ちます。 -
4. 結論
ー 書面審理のみによる仲裁は、慎重に活用されれば強力な手段となります。手続上の欠陥によって書面仲裁の判断が取り消された事例があることは、書面審理という形式自体を否定する根拠にはなりません。むしろ、より慎重な手続き設計のもとで書面審理という手法を活用すべきであるという実務上の教訓を示すものです。
(執筆:アール・リベラ=ドレラ、翻訳:馬場 涼乃)
※本記事の内容は、一般的な情報提供であり、具体的な法的又は税務アドバイスではありません。
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TKI (Singapore) LLP
earl.dolera@tkilaw.com
アール・リベラ=ドレラは国際仲裁を専門とする紛争解決弁護士です。当事務所入所前は、ベトナムのFrasers Law Company(旧Freehills)においてパートナー兼国際仲裁部門責任者を務め、ICC、SIAC、JCAA、HKIACなど主要仲裁機関に基づく仲裁手続においてクライアントを代理してきました。また、仲裁人(議長仲裁人、単独仲裁人、当事者指名仲裁人)としても継続的に活動しています。
日本、シンガポール、ロンドン、ベトナムなどの主要法域にまたがる紛争案件において豊富な経験を有し、エネルギー、建設、クロスボーダー取引など幅広い分野を取り扱っています。これまでに200件以上、総請求額100億米ドル超に及ぶ案件に関与し、仲裁人、代理人、またはシンガポール、ロンドン、ニューヨークにおける著名な国際仲裁人の下での仲裁廷書記など、様々な立場で実務経験を積んでいます。
イングランド・ウェールズのソリシター資格に加え、ニューヨーク州、テキサス州、およびフィリピンの弁護士資格を有しています。また、Chartered Institute of ArbitratorsおよびSingapore Institute of Arbitratorsのフェローでもあります。