【コラム】オンラインプラットフォームにおける医薬品・医療機器・医療部外品・化粧品の広告規制―出店を検討する企業のための実務上の留意点―
オンラインプラットフォームにおける医薬品・医療機器・医療部外品・化粧品の広告規制―出店を検討する企業のための実務上の留意点―
Executive Summary, Key Questions (FAQ) / 要約(クリックで開く)
- オンラインで医薬品・化粧品等を販売する際に適用される主な規制は何ですか?
― 主に薬機法、医薬品等適正広告基準、景品表示法、特定商取引法、健康増進法等が適用されます。これらは個別にではなく複層的に適用されることが多く、虚偽・誇大広告や未承認製品の広告は禁止されています。 - 製品カテゴリーごとに広告規制のポイントはどのように異なりますか?
― 化粧品は効能表現の範囲が厳しく限定され、医薬部外品は承認された効能効果の範囲内でのみ表現可能です。医薬品・医療機器については未承認製品の広告が禁止されており、承認範囲を超える表現も認められません。 - オンライン販売において「広告」とみなされる範囲はどこまで及びますか?
― ウェブページ本文に限らず、商品画像内テキスト、動画、SNS投稿、外部リンク先のLPなど、消費者の購買判断に影響を与える表示は広く「広告」と評価され得ます。 - 口コミやインフルエンサーの投稿はどのように規制されますか?
― 企業が依頼したり掲載や拡散に関与した場合には広告と評価され、ステルスマーケティング規制の対象となりえます。 - 「個人の感想です」等の注記は法的リスクを回避できますか?
― 回避できないおそれがあります。広告は表示全体の印象で判断されるため、注記があっても画像やキャッチコピー等により医薬品的効能を想起させる場合には規制対象となりえます。 - 出店時に法令遵守だけで十分ですか?
― 不十分です。各オンラインプラットフォームの広告ポリシーにも従う必要があり、法令より厳格な基準が設けられている場合もあります。違反すると出品停止やアカウント制限等のリスクがあります。
1. はじめに
オンラインプラットフォームを通じた医薬品、医療機器、医薬部外品及び化粧品の販売は、健康・美容領域の市場拡大に伴い、近年ますます活発化しています。これらの製品分野は、消費者の生命・身体・健康に密接に関わるものであり、広告表現に対する法規制が極めて厳格に整備されており、オンラインプラットフォームによる違法又は違法疑いの商品に対する監視・執行も強化されています。新規にオンライン販売を検討される企業においては、出店前の段階から、関連法令と各プラットフォームの定める広告ポリシーの双方を踏まえたコンプライアンス体制を構築しておくことが肝要です。
本ニュースレターでは、オンラインプラットフォームへの新規出店をご検討中の企業のビジネス・法務・コンプライアンス担当の皆様を念頭に、関連する広告規制の概要、近時の執行動向及びオンライン取引に特有の実務上の留意点を整理します。
2. 規制の全体像
医薬品、医療機器、医薬部外品及び化粧品(以下「医薬品等」といいます。)の広告には、以下の法令・通知が複層的に適用されます。
(1)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)
・第66条第1項:医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽又は誇大な広告の禁止
・第68条:未承認医薬品等の広告の禁止
・第75条の5の2:虚偽・誇大広告に対する課徴金制度(対象売上額の4.5%、令和元年改正により導入)
(2)医薬品等適正広告基準
上記薬機法の規制について、厚生労働省通知(平成29年9月29日薬生発0929第4号、薬生監麻発0929第5号)により示された解釈・運用基準で、承認又は医学・薬学上認められた効能効果の範囲を超える表現の禁止、効能効果等又は安全性を保証する表現や最大級表現の禁止(これには、体験談の慎重な取扱い、比較広告に対する制約も含まれます。)等、具体的な制限が定められています。
(3)関連法令
・不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)(第5条):優良誤認表示・有利誤認表示の禁止
・特定商取引に関する法律(第12条):通信販売における誇大広告等の禁止
・健康増進法第65条:食品の虚偽・誇大表示の禁止(健康食品・美容食品関連)
これらの規制は独立に適用されるのではなく、ひとつの広告表現に対し複数の法令が併合的に適用されることが少なくない点に留意が必要です。
3. 製品カテゴリーごとの留意点
(1)化粧品
化粧品については、効能効果の表現として許される範囲が非常に限定されており、具体的な文言レベルでの考慮が必要となります(厚労省通知平成23年7月21日薬食発第0721第1号)。例えば、「シミが消える」「細胞レベルで修復」「再生する」といった表現は、薬機法上の誇大広告及び景品表示法上の優良誤認表示の双方に該当し得ます。近年、消費者庁は化粧品表示に関し景品表示法に基づく措置命令を継続的に行っており、ウェブサイト上の商品説明文のみならず、商品画像内のテキスト、使用前後比較画像、口コミ・体験談についても、表示主体性が認められれば「広告」と評価される傾向にあります。このような複雑な規制を遵守した適正な広告を行うためには、化粧品公正取引協議会が作成している化粧品の表示に関する公正競争規約や、日本化粧品工業会による化粧品等の適正広告ガイドラインを参照することも有用です。
(2)医薬部外品
医薬部外品は、承認を受けた効能効果の範囲内のみ表現が可能です。医薬部外品の効能効果について 「○○を防ぐ」という効能効果で承認を受けているものにあっては、単 に「○○に」等の表現は認められていないなどの文言レベルでの制約があります。例えば、育毛剤等について、「薄毛が治る」「発毛を保証」「医学的に証明」等の表現が、各都道府県の医薬品等広告監視指導において指導対象とされている事例は、毎年公表される監視指導結果からも確認されます。
(3)医薬品・医療機器
未承認の医薬品及び医療機器の広告は、薬機法第68条により一律に禁止されます。承認済品目についても、承認された効能・効果の範囲を超える表現は許容されません。一般用医薬品、体外診断用医薬品、家庭用医療機器等を含め、品目区分に応じた表現範囲の事前確認が前提となります。医療機器ビジネスのDDにおいては、薬事許認可の取得状況に加え、近年の投資・M&A実務を踏まえると、内部統制や知的財産、プログラム医療機器該当性といった観点も重要になります。
4. オンライン販売特有の留意点
オンライン環境特有の論点としては、近時の公表事例及び裁判例を踏まえ、以下に特に注意が必要です。
(1)「広告」として評価され得る表示媒体の広範性
薬機法上、顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させ る)意図が明確であること、特定医薬品等の商品名が明らかにされていること、一般人が認知できる状態であることという3要件を満たせばどのような形態であっても「広告」とみなされるため、媒体を問わない広範な定義となっています。ウェブページの本文のみならず、商品画像内に埋め込まれたテキスト、サムネイル、動画コンテンツ、販売ページから外部リンクされるランディングページ、関連するSNS投稿等、消費者の購買判断に影響を及ぼし得る表示は、いずれも「広告」として評価対象となり得ます。例えば、景品表示法の事例ですが、Googleマップの口コミへの投稿についても、同法によって規制される「事業者の表示」(事業者による広告)に該当するとして、違反認定された事例があります。
(2)体験談・口コミ・インフルエンサー起用
利用者の自発的な投稿であっても、出品者がその投稿を依頼し、あるいは掲載・拡散に関与している場合には、出品者による広告と評価される可能性があります。インフルエンサー、アフィリエイター等を通じた表現も同様であり、表示の主体性・指示の有無の整理が重要となります。例えば、顧客のSNSの投稿を自社サイトに抜粋掲載した事例で、企業自身が投稿者に対し、一定の内容を投稿するように依頼することで表示内容の決定に関与したとみなされ、ステルスマーケティングであると認定された事例があります。
(3)表現の総合的判断
広告の誇大性は、複数の裁判例においても示されるとおり、表示全体が一般消費者に与える印象を基準に判断されます。個々の文言が形式的に基準に適合していても、画像・キャッチコピー・体験談を含む全体構成から医薬品的効能を想起させる場合には、規制対象となり得ます。例えば、「※個人の感想です。」といった留保をつけていても、比較画像などにより一般消費者が認識する当該商品の効果を打ち消すものではないと評価される事例もあります。医療機器ビジネスのM&Aや投資においては、薬事許認可の二段階構造やプロダクトライセンスの承継要件といった特有の規制枠組みを正確に理解し、手戻りのないプロセスを設計することが不可欠です。
5.オンラインプラットフォームのポリシーとの関係
多くのオンラインプラットフォームは、医薬品等の出品・広告に関し、上記法令の趣旨を踏まえた独自の、あるいは上記法令を引用する出品ガイドライン・広告ポリシーを定めています。これらは法令と整合的に設計されているのが通例であり、出店企業がプラットフォームのポリシーを遵守することは、結果として薬機法・景品表示法等の遵守にも資する関係にあります。
他方で、プラットフォームのポリシーには、利用者保護や取引の信頼性確保の観点から、法令上の最低限の要請を超えるより厳格な基準(特定の表現類型の事前禁止、追加的な根拠資料の提出要請等)が設けられている場合もあります。出店検討段階では、対象プラットフォームの最新のガイドラインを確認し、これに対する遵守チェックも出店・出品前に出店企業側で行う表示審査プロセスに組み込んでおくことが実務上肝要です。薬機法等に違反すると認定された場合、行政措置(措置命令、課徴金納付命令、業務停止命令、場合により罰則)に加え、ポリシー違反となり、プラットフォーム上の出品停止や販売アカウントの利用制限等の措置が採られるおそれが高くなります。一度こういったエンフォースメント措置が採られると、回復までの時間や対応など多大なコストが生じます。出店対応での手戻りやアカウント管理に多大な支障をきたさないためにも、レピュテーション及び事業継続性の観点から重要なリスクとして認識しておくことが望まれます。
6.課徴金制度
平成28年景品表示法改正により、課徴金制度が導入され、優良誤認表示行為、有利誤認表示行為については、対象期間中の対象商品・役務の売上額に3%を乗じた額が課徴金として課されることがあります(同法第8条)。また、令和元年改正薬機法により導入された課徴金制度(同法第75条の5の2第1項・第66条第1項)は、医薬品、医薬部外品、化粧品等について、虚偽・誇大広告に係る措置の実効性をいっそう高めるものであり、対象期間中の対象製品の売上額に4.5%を乗じた額が課徴金として課されます。一定の場合の減額・除外規定はありますが、オンライン販売は売上額の特定が比較的容易であり、過去の表示記録もアーカイブとして残存することから、行政の執行に親和的な販売形態である点に留意が必要です。
7.出店検討段階における実務対応のポイント
以上を踏まえ、出店・出品検討段階では、特に以下の点について事前整理を行うことが望まれます。
・取扱予定品目の薬事区分(医薬品/医療機器/医薬部外品/化粧品/一般雑貨)の確定
・承認・届出に係る効能効果の範囲の明確化と、許容される表現リストの事前整備
・商品画像・LP・関連SNS投稿を含む全広告素材の社内審査フローの構築
・体験談・口コミ・インフルエンサー起用に関する社内ガイドラインの策定
・出店予定プラットフォームの広告ポリシーの確認及び社内基準への反映
・課徴金制度を念頭に置いた表示根拠資料(エビデンス)の保存体制の整備
8.結語
医薬品等のオンライン広告に対する規制は、表現の形式・強度のみならず、消費者が受ける印象に基づき総合的に判断されます。「業界慣行」「体験談だから問題ない」「画像内なので広告ではない」といった整理は通用しないとの前提に立ち、出店・出品初期段階から実効的なコンプライアンス体制を構築することが、事業のスムーズな立ち上げ、持続的発展のために不可欠です。
当事務所では、ヘルスケア・ライフサイエンス領域における広告審査、社内ガイドラインの策定支援、行政対応、プラットフォームとの調整等に関するご相談を広く承っております。具体的なご検討案件がございましたら、担当弁護士までお気軽にお問い合わせください。
※本ニュースレターは一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の事案に対する法的助言を構成するものではありません。具体的な事案については、必ず弁護士にご相談ください。

東京国際法律事務所
naoko.ishihara@tkilaw.com
東京国際法律事務所パートナー弁護士。主要な米国系・日本の法律事務所で15年以上のキャリアを持つ、知的財産(IP)およびテクノロジー法務のスペシャリスト。
・専門分野: IPライセンス、技術移転、ジョイントベンチャー・M&Aに伴う知財取引、知財・商事紛争(裁判所、特許庁、公取委対応、国際訴訟戦略)。コンピュータ、自動車、半導体、医療機器など幅広い技術分野に対応。
・強み: 多国籍企業等でのインハウス(社内弁護士)業務および内部調査の豊富な経験を活かした、実践的なコーポレート法務支援。
・資格: 第二東京弁護士会(2009年登録)、カリフォルニア州弁護士(2017年登録)
・主な所属・役職: 日本ライセンス協会、著作権法学会、日本商標協会、日本仲裁人協会。Global Vascular株式会社およびPIVOT株式会社の社外監査役。

東京国際法律事務所
minoru.fukawa@tkilaw.com