INFORMATION

2020.04.30

【COVID-19】米国のビジネスにおける新型コロナウイルスに関連して発生する紛争とその対応策 <後半>

INSIGHT

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに伴う、米国のビジネスに関連して発生する紛争とその対応策について、今回は後半部分をお届けします。
米国ビジネスに潜在する訴訟リスクを予測し、訴訟が発生する前に適切な予防策を検討する際のお役に立ちましたら幸甚です。

下記の情報は、米国法律事務所のKirby McInerney LLPに所属するChristopher Studebaker弁護士より提供いただいています。なお、同弁護士より「米国における新型コロナウイルス(COVID-19)に関連する契約上の問題への対応」についても情報を提供いただいていますので、あわせてご参照ください。

米国のビジネスにおける新型コロナウイルス(COVID-19)に
関連して発生する紛争とその対応策 <後半>

今後発生する可能性のある訴訟としては、特に、デリバティブ商品(サブプライム危機後の事件に類似しています)、サプライチェーンに係る契約、雇用者と従業員間の紛争、倒産などがあります。

【今後発生しうる訴訟】

1. デリバティブ商品に関する訴訟

リーマンショック時の金融危機後、資産担保証券に関する訴訟や仲裁の波が押し寄せました。COVID-19のパンデミックは、1兆ドルから3兆ドルと推定されるレバレッジド・ローン市場に関連する同様の紛争に拍車をかける可能性があります。このような紛争の一つとして、投機的な格付けがなされた企業向けローンの証券化であるローン担保証券(CLO)に関する紛争が起こりえます。今般の世界的なパンデミック以前から企業の負債額が増加する中、CLOが金融システムと投資家にもたらすリスクへの懸念から、CLO市場への監視が強まっていました。現在、パンデミックの影響で、消費者需要の減少やサプライチェーンの混乱に直面している高レバレッジの企業は、ローンの返済が困難になる可能性があります。支払遅延はローンのデフォルトにつながる可能性があり、その結果、下位のトランシェのCLO投資家のみならず、リスクが低いとされている上位トランシェのCLO投資家でさえも、多額の損失を被る可能性があります。その結果、CLO関連の訴訟が発生する可能性があります。サブプライムローン危機と同様に、債券保有者がCLOマネジャー、アレンジャー、受託者を訴え、CLOマネジャーがアレンジャーを相手に訴訟を起こすなどの紛争が発生する可能性があります。

2. 企業間の訴訟

サプライチェーン内の企業は、訴訟または仲裁において契約の相手方に対して救済を求める事態になりえます。例えば、COVID-19に起因する物資等の不足のために、原材料、部品、または製品のサプライヤーを異なるサプライヤーに切り替える場合に契約上のクレームがなされる可能性があります。その他にも、契約上の義務を履行できなかったり、商品やサービスの納入が遅延したりすることで紛争が発生する可能性があります。さらに、結果損害、損害軽減義務、および履行不能が問題になる可能性もあります。反訴、第三者請求、サプライチェーン内の共同訴訟人間の交差請求(一当事者から他の共同訴訟人に対する請求のこと)は、問題をさらに複雑にさせる可能性があります。契約上の義務を免除されるために、パンデミックや政府による必要不可欠でない事業の停止指示を不可抗力(Force Majeure)事由として主張する契約当事者が存することも考えられます。このような条項の適用可否とその範囲、および履行しないことが正当化されるか、という紛争も発生するものと予想されます。

3. 雇用関連訴訟

COVID-19のパンデミックは、間違いなく従業員と雇用主間の多くの紛争を引き起こすことになります。雇用主に対する請求には、従業員の健康と安全を適切に保護しなかったこと(特に主な事業がロックダウンの対象とならない企業)、COVID-19の職場での感染拡大を抑制しなかったことが含まれる可能性があります。より多くの企業がリモートワーク制度を導入するようになると、不適切な病欠、疾病手当、在宅勤務制度をめぐる紛争が発生する可能性があります。あるいは、企業がリモートワーク制度を導入していなかったために紛争が発生することもあるかもしれません。
また、雇用主のサイバーセキュリティ対策が不十分であったために個人情報が不用意に開示された場合には、雇用主の責任が問われる可能性もあります。これらのリスクは、サイバー犯罪者がフィッシングやその他の欺瞞的な手段を用いてCOVID-19を悪用し、ネットワークへの不正アクセスを狙うことで増大しています。

従業員が職場に復帰すると、雇用主は新たな予防措置(COVID-19検査の義務化など)を講じようとするかもしれませんが、このような措置は医療記録の守秘性やプライバシーに関する法令に抵触する可能性もあります。安全な職場環境を作るためには合理的であるとはいえ、雇用者の責任が問われる可能性があり、十分に注意する必要があります。例えば、連邦・州法では、「職務に関連し事業に必要でない限り」従業員の健康診断を行うよう要求することを禁止していますが、連邦・州のCOVID-19に関連するガイドラインでは、感染拡大を防ぐための目的で従業員の体温測定をすることを許容しています。したがって、雇用主は、測定方法が身体に害を与えるような方法でない場合、従業員の同意なしに体温測定を行うことができますが、どんな情報が収集され(体温)、どのように情報が利用されるのか(安全な職場環境をつくるため)といったことを従業員に開示する義務があります。現時点では、他のどんな検査も連邦・州の労働関連法規に違反し、訴訟につながる恐れがあることに留意する必要があります。

4. 倒産

COVID-19に起因する「必要不可欠でない」業務の停止で、企業や個人の倒産が急増する可能性があります。米連邦準備銀行は、政府が介入しない限り、COVID-19関連の倒産は20万件急増して、全体で100万件近くになると予測しています。必要不可欠ではない企業(デパートや小売店など)の店舗閉鎖の強制や、広範囲にわたる雇用の喪失が、消費者の消費を押し下げています。流動性に関する問題と相まって、店舗販売を行う企業は倒産の申立てを行う可能性があり、実際いくつかの店舗は倒産の危機に瀕しています。燃料価格の下落により、パンデミックの前から苦戦していた石油・ガス会社も倒産する可能性があります。パンデミックの長期化に伴い、債務整理や連邦破産法Chapter 11の申請が増加し、連邦破産法Chapter 7やChapter 13に基づく個人破産も増加すると思われます。

景気が悪くなると、たびたび法的紛争が急増します。今般の世界的なCOVID-19のパンデミックは、米国で新たな訴訟の波を引き起こしましたが、終息の目処は立っていません。日本企業は、世界的な混乱に伴う訴訟の増加に備える必要があります。

(執筆担当者:飯島


※本記事の内容は、一般的な情報提供であり、具体的な法的アドバイスではありません。
ご質問などございましたら、下記弁護士までご遠慮なくご連絡ください。

連絡先:飯島 進 Tel: 03-6273-3572(直通)E-mail: susumu.iijima@tkilaw.com