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【コラム】オンライン服薬指導制度の変遷と現行制度の基本構造

オンライン服薬指導制度の変遷と現行制度の基本構造

Key Questions (FAQ) / 要約(クリックで開く)
  • オンライン服薬指導制度はどのような背景で導入され、当初はどのように運用されていましたか?
    ― 地域包括ケアの進展や患者の生活環境の変化に伴い、テレビ電話等を用いたオンライン服薬指導のニーズが高まったことから、2019年改正薬機法により対面による服薬指導義務の例外として制度化されました。もっとも、導入当初は「対面服薬指導歴があること」や「服薬指導計画の作成義務」といった厳格な実施要件が課されていたため、制度の利用は限定的でした。
  • 新型コロナウイルス対応の「0410対応」と現行制度にはどのような違いがありますか?
    ― コロナ禍における「0410対応」は、薬剤師の判断で初診も含めて電話(音声のみ)による服薬指導を可能とした時限的・特例的な措置であり、2024年4月に廃止されました。これに対し、現行制度(2026年5月現在)では電話による音声のみの対応は認められておらず、映像および音声による対応が必須とされています。また、現在の制度は特例措置の延長ではなく、利便性と安全性を兼ね備えた平時の恒久的な制度として再構成されたものです。
  • オンライン服薬指導を利用する際、処方箋の取扱いや薬剤の配送はどのようになりますか?
    ― 処方箋については、医療機関から薬局へファクシミリやメール等で送付された処方箋情報に基づき調剤を行うことが可能であり、処方箋原本は後日送付する流れとなっています。また、従来の紙の処方箋だけでなく電子処方箋の仕組みも創設されており、より安全かつ効率的な情報連携の基盤が整備されました。なお、薬剤配送を利用する場合であっても、品質保持、本人への授与、受領確認の責任は一貫して薬局に残ることが明確化されています。
  • 2026年5月に施行された改正薬機法により、対象となる薬剤はどのように拡大しましたか?
    ― 2025年改正薬機法(2026年5月施行)により、従来の処方箋医薬品に加えて、新たに「要指導医薬品」についてもオンライン服薬指導を利用した販売が可能となりました。要指導医薬品は新規性が高くリスク評価が定まっていないため、従来は対面での情報提供・指導が必須でインターネット販売の対象外でしたが、患者の利便性向上のためにオンライン対応が拡張されました。
  • すべての「要指導医薬品」がオンライン服薬指導の対象ですか?例外(特定要指導医薬品)について教えてください。
    ― いいえ、すべての要指導医薬品がオンライン服薬指導の対象ではありません。適正な使用のために薬剤師による対面での販売または授与が特に必要として厚生労働大臣が指定する医薬品は「特定要指導医薬品」に区分され、引き続き対面販売が必要とされます。具体的な例として、2026年5月20日時点で、緊急避妊薬(有効成分:レボノルゲストレル)が特定要指導医薬品として指定されています。
  • 薬剤師は「薬局外」からオンライン服薬指導を行うことは可能ですか?
    ― はい、一定の要件を満たせば「薬局外」からの実施も可能です。2022年9月の見直しにより、患者の求め・同意がある場合において「調剤を行う薬剤師と連絡をとることが可能であること」や「対面と同程度に患者のプライバシーに配慮されていること」などの要件を満たすことで、薬局外から服薬指導を行うことができるようになりました。これにより、薬局における運営体制の選択肢が広がっています。

オンライン服薬指導は、患者の利便性を高めるために2019年改正薬機法により制度化され、新型コロナウイルスの拡大を受けた時限的な対応(いわゆる「0410対応」)を経て利用可能性が広がりました。
2022年の薬機法施行規則改正により、オンライン服薬指導利用の要件が見直され、薬剤師の個別判断による実施を前提とする恒久化制度として再構成されました。その後、2026年5月に施行された改正薬機法により、要指導医薬品についてもオンライン服薬指導が利用できるようになり、制度利用の範囲がさらに拡充されています。
本コラムでは、オンライン服薬指導制度の変遷やコロナ禍での0410対応と現行制度の違いを整理します。
なお、本稿は、2026年6月時点の情報に基づいて執筆しております。

1. オンライン服薬指導制度のニーズと制度化

処方箋に基づき調剤された薬剤については、従前、薬剤の適正使用を確保し、薬剤師が患者の状態や服薬状況を確認し、薬学的知見に基づく必要な情報提供・指導を行うため、薬剤師による対面での服薬指導が原則とされていました。
もっとも、地域包括ケア(住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための生活支援)の進展や、患者の療養の場・生活環境の変化に伴い、薬剤師・薬局には、対面でなくともテレビ電話等を用いることにより適切な服薬指導が行う仕組みであるオンライン服薬指導のニーズが高まっていきました。
このようなニーズを受けて、2019年改正薬機法は、薬剤の適正使用を確保しつつ、優れた医薬品をより安全・迅速・効率的に提供するとともに、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備するため、一定のルールの下で、テレビ電話等による服薬指導を対面義務の例外として認める制度を導入しました。

2. オンライン服薬指導制度の変遷の概要

オンライン服薬指導制度は、2019年改正薬機法による制度化を出発点として、2020年の0410対応による時限的な運用の拡大を経て、その後の患者のニーズに即した薬機法施行規則の改正や実施要領の整備により、恒久的な制度として再構成されました。
以下では、オンライン服薬指導の制度化から、現行制度までの変遷を時系列で整理します。

時期 改正概要 ポイント
2019年12月
(2020年9月施行)
オンライン服薬指導の制度化
(薬機法9条の3改正、薬機法施行規則15条の13第2項新設)
オンライン服薬指導の実施要件として、以下の内容が定められており、制度利用のハードルがあったため、利用は限定的であった。
① 対面服薬指導歴があること (旧薬機法施行規則第15条の13第2項第1号)
② 服薬指導計画の作成義務 (同項第2号)
2020年4月 コロナ対応の特例的取扱い
(0410対応)
新型コロナウイルスの拡大に際しての時限的・特例的な対応として、薬剤師の判断で、初診も含め、電話等による服薬指導を行うことを可能とした。
2022年3月 薬機法施行規則改正による、
オンライン服薬指導の要件の見直し
(薬機法施行規則15条の13改正)
①対面服薬指導歴や②服薬指導計画の作成義務といった従前の要件が外れ、薬剤師がオンライン服薬指導の実施を都度判断する構造へ大きく転換した(旧薬機法施行規則第15条の13第2項)。
2022年3月以降 処方箋の取扱い整理 医療機関から薬局へのファクシミリ・メール等による処方箋情報送付と、後日の原本送付の流れが整理された。これにより、薬局は処方箋原本を待たずに処方箋情報をもとに調剤等を行うことができるようになった。
さらに、従来の紙の処方箋を前提とした運用に加え、電子処方箋の仕組みが創設され、医療機関と薬局との間における処方情報・調剤情報の連携をより安全かつ効率的に行うための基盤が整備された。
2022年3月 薬剤配送のルール整備 薬剤配送を使っても、品質保持、本人授与、受領確認の責任は薬局に残ることが明確化された。
2022年9月 実施場所の見直し 一定の条件を満たせば、薬剤師は薬局外からオンライン服薬指導を行うことが可能となり、運営体制の選択肢が広がった(下記3.の表「実施場所」参照)。
2024年4月 コロナ対応の特例的取扱いの廃止 コロナ対応での特例的運用 (0410対応) が廃止された。
2025年5月
(2026年5月施行)
要指導医薬品のオンライン対応拡張 要指導医薬品でオンライン服薬指導を経た販売が可能となる方向が示される一方、引き続き対面での指導・販売が必要な「特定要指導医薬品」との区分が明確にされた(下記4.参照)。

3. 0410対応と現行制度(2026年5月時点)の比較

オンライン服薬指導をめぐる制度は、いわゆる「0410対応」を契機として、コロナ禍の下で実務上大きく拡大しました。他方、0410対応はあくまで新型コロナウイルスへの対応として設けられた時限的・特例的な取扱いであり、2024年4月に廃止され、現在は、薬機法、同法施行規則及びこれらの実施要領等に基づき、オンライン服薬指導が運用されています。
以下では、0410対応と現行制度とを対比しつつ、オンライン服薬指導の実施要件、実務運用の相違を整理します。

制度 0410対応(2020年4月~2024年4月) 現行制度(2026年5月現在)
実施方法 初回でも、薬剤師の判断と責任に基づき、オンライン服薬指導の実施が可能 左記同様
通信方法 電話(音声のみ)でも可 映像及び音声による対応(音声のみ不可)
(薬機法9条の4第1項)
薬剤の種類 原則として全ての薬剤
(手技が必要な薬剤については、薬剤師が適切と判断した場合に限る。)
処方箋医薬品のほか、要指導医薬品(特定要指導医薬品を除く。)についても、薬剤師の判断に基づくオンライン服薬指導による必要な情報提供等を経た販売が可能(下記4参照)
調剤の取扱い 医療機関からファクシミリ等で送付された処方箋情報により調剤可能
(処方箋原本は医療機関から薬局に事後送付)
左記同様
実施場所 特に規定なし
(薬剤師:その調剤を行った薬局内の場所とすること)
患者の求めがある場合又は患者の異議がない場合には、以下を含む一定の要件を満たす場合、薬剤師は薬局外からオンライン服薬指導を実施することも可能
・ 調剤を行う薬剤師と連絡をとることが可能であること
・ 対面による服薬指導が行われる場合と同程度に患者のプライバシーに配慮がなされていること

4.2025年5月改正薬機法(2026年5月施行)の内容

2025年改正薬機法では、患者の利便性の向上のため、要指導医薬品(薬機法4条5項3号)の取り扱いが見直されました。要指導医薬品とは、新規性が高かったり、リスクの評価が定まっておらず、薬剤師による確認や説明が重要とされる医薬品です。従来、要指導医薬品については、薬剤師による対面での情報提供・指導を前提としており、インターネット販売の対象とはされていませんでした。
これに対し、2025年改正薬機法では、要指導医薬品についても、薬剤師がオンラインで必要な情報提供や服薬指導を行った上で販売することが可能となります。
他方で、すべての医薬品についてオンライン対応が認められたわけではなく、適正な使用のために薬剤師の対面による販売又は授与が行われることが特に必要だとして厚生労働大臣によって指定される医薬品については、特定要指導医薬品として区分され、引き続き対面販売が必要とされます(薬機法36条の5第3項参照)。2026年5月20日時点で、緊急避妊薬(有効成分:レボノルゲストレル)が特定要指導医薬品として指定されています。

5.おわりに

オンライン服薬指導制度は、2019年改正薬機法による制度化、コロナ禍における0410対応、2022年の薬機法施行規則改正による要件の見直し、さらに2025年改正薬機法による要指導医薬品へのオンライン対応の拡張を経て、段階的に整備されてきました。現在の制度は、コロナ禍における時限的な特例の延長ではなく、患者の利便性の確保をする平時の制度として再構成されています。本稿が、オンライン服薬指導制度の全体像と、特にコロナ後における制度の進展をご理解いただく一助となれば幸いです。

(執筆:美馬 拓也青木 陽佑


※本ニュースレターは一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の事案に対する法的助言を構成するものではありません。具体的な事案については、必ず弁護士にご相談ください。

美馬 拓也
東京国際法律事務所
takuya.mima@tkilaw.com

美馬拓也弁護士
国内大手法律事務所において10数年以上にわたり、M&A、戦略的提携、事業再編、クロスボーダー取引等を含む企業法務全般に従事。特にライフサイエンス・ヘルスケア分野を中心に、ライセンス契約、共同研究・開発、ブランド・デザイン保護等の知的財産関連取引に加え、米国における特許訴訟を含む知財紛争についても豊富な経験を有する。さらに、外資系製薬会社の法務部及び大手メーカーの知財部門への出向経験を通じて、規制対応や知財管理を含む実務とビジネスを架橋する、実践的な助言を提供している。知財及びヘルスケア分野に関する執筆実績も多数。

青木 陽佑
東京国際法律事務所
yosuke.aoki@tkilaw.com